HeavyBommer@blog
時事ネタ、コンピュータ、家電、プログラミング等々、思ったこと/考えたこと/提案/使用レポ/Tipsなどを思いついたときに書いてゆきます
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メサイアコード書評
メサイアコードを読みましたので、感想や考察を。
なお、ネタバレを含みますので、いやな方は「続きを読む」をクリックしないようにしてくださいね。
まず、粗筋です。

主人公トムは遺伝子研究の第一人者。
彼はコンピュータの天才であるジャスミンなど仲間の協力を得てジーンスコープという、遺伝子を短時間で完全に読み取る装置の開発に成功しています。
物語は、トムをはじめとする仲間たちのノーベル賞受賞式直後、トムを狙った凶弾により彼の妻が命を落とすところから始まります。
その後、妻の遺体に脳腫瘍が発見されます。
トムの母親も脳腫瘍で命を落としている(正確には闘病に疲れての自殺)ため、心配になったトムは7歳になる一人娘の遺伝子をジーンスコープに掛けます。
その結果、娘の命は後1年足らずであることが分かってしまいます。
娘が発病するであろう脳腫瘍は通常の方法(トムが研究している遺伝子治療を含む)では直せないものであり、娘を救うためにトムは「イエスキリストの遺伝子」を使うことを思いつきます。
#伝説によるとイエスキリストは他人の病や怪我をたちどころに治す能力があったとされているため

一方、ブラザーフットという狂信的キリスト教徒達は、はるか昔から彼らが守ってきた「聖なる炎」のお告げにより、イエス以来の救世主誕生を知り、現代の救世主を探索しています。
#予言によるとイエスの次に生まれる救世主は自分が救世主であることを知らないため、ブラザーフットがそのことを教えて「聖化」しなければならない
しかし、彼らは「救世主を探す」という第一目的以外に、法の網に掛からない悪者に神の裁きを下すという目的も持っていて、何を隠そうトムの命を狙っているのも彼らの刺客であるマリアでした。
彼らはこの世に誕生しているはずの救世主を血眼で捜していましたがこれまで成果らしいものはなく、トムが極秘に持っているDNAデータベース(ジーンスコープにかけられた遺伝子情報を蓄積している)を利用することを思いつきます。
幸いマリアにとっての初の失敗のためにトムは存命だったので、彼らの長であるエゼキエルはトムに接触して救世主探索に協力させることにします。

トムの方も、手を尽くしてキリストの聖遺物などからイエスのDNAを入手しようとしていましたが、うまく行かずあきらめかけていたところにエゼキエルからの接触があります。
彼らブラザーフットは秘密結社であることもあり「本物の」聖遺物を持っていたのです。
そして、トムはエゼキエルの提案を承諾し、キリストの遺伝子を手に入れます。
しかし、キリストの特異な3つの遺伝子を動物実験やシュミレーションで解析しても、奇跡の力の正体は解明できず、トムは娘を助けるためにも、エゼキエルとの契約を果たすためにも「現存している人間の中でキリストと同じ遺伝子を持つ者」の探索に集中することになります。

そのころ、マリアはブラザーフット本部の決定を無視して、一度失敗したトム殺害を独自に実行しようとしていました。
ところが、ジャスミンの気転などによりトムの殺害はまたしても失敗し、マリアは警察に捕まり死刑判決を受けることになります。

ここで、救世主探索に意外な進展がもたらされます。
なんと、キリストと同じ遺伝子をマリアが持っていたのです。
トムもエゼキエルもこれに衝撃を受けます。
死刑囚であり1月足らずで処刑されることもありますが、エゼキエルとしては今まで暗殺者として利用してきたマリアが救世主であったこと、またマリアのいた孤児院で「幼いころにマリアは奇跡の力を発揮していたらしい」(孤児院ではうそだと決め付けられていた)ことを聞いていたのに気づかなかったことなどが重なりより大きな後悔となっていました。

エゼキエルは何とかマリアを救出しようと画策し、まずマリアが救世主であることを本人に告げようと彼女と面会します。
彼女は最初は驚き戸惑いますが、過去に自分が奇跡の力を発揮していたことを思い出し(自分自身でも作り話だったと思い込んでいた)納得します。
そして、マリアは自分が救世主であることを確信し、一度処刑された後で遺体をブラザーフットが盗み出し、復活するという方法をエゼキエルに指示します。

一方、トムは知事と掛け合い、マリアに減刑取引で娘を救って欲しいと持ちかけますが、マリアに断られます。
このころには娘は既に発病し、危険な状態にまで進行していました。

他に手が無くなったトムは外科手術で腫瘍を切除し、少しでも延命することに賭けます。
ところが、この手術の最中、娘は心停止に陥ってしまいます。
絶望に娘を抱きしめるトムは、ここでひとつの閃きを得ます。
今まで機能の分からなかったキリストの三つの遺伝子ですが、直前の動物実験から「遺伝子を注入したマウスは隔離するとまったく治癒効果は発揮されず、複数のマウスを一緒にしておくと治癒する」ということが分かっていました。
閃きを得たトムは、実験用に培養してあったキリスト遺伝子を自分に注射すると、死亡した娘をしっかりと抱きしめます。
そして奇跡がおき、娘は何事も無かったかのように回復します。

そして、マリアの処刑当日。
トムは娘を連れて、処刑室に向かうマリアに最後の面会をします。
そこで、キリストの遺伝子の能力が分かったことその力で娘が回復したことを告げ、「与えることは、受けることよりも幸いなり」という聖書の一句を残します。

これにマリアは愕然となります。
キリストの遺伝子は「自分自身を治癒する能力は無い」ということが分かってしまったのです。
復活を基にしたマリアの計画は失敗に終わる可能性が高くなってしまいましたが、既に処刑は目前で計画の撤回は不可能でした。
結局マリアは処刑され、計画通りブラザーフットはマリアの遺体を盗み出して、彼らの本拠地である「聖なる洞窟」に篭ります。

トムは、娘も回復しキリストの遺伝子の謎も解け、妻を殺したマリアも処刑され、穏やかな日常に戻りつつありました。
が、ブラザーフットは依然としてトムを「神の力を弄ぶ危険な存在」とみなしており、マリアに代わって別の刺客を送り込んでありました。
しかし、またしてもトム殺害は失敗し、その刺客を見てトムは自分の命を狙っていたのがブラザーフットであることを知ります。
#新しい刺客とはトムが聖なる洞窟に赴いたときに会っている
トムは、マリアの遺体を盗んだのもブラザーフットであり、彼らが存続している限り自分や周囲の人間が狙われ続けるだろう事も理解し、FBIに協力してブラザーフット壊滅を計ります。

聖なる洞窟でマリアの復活を待っていたエゼキエル達は、予想外のFBIの急襲を受け追い込まれます。
追い込まれたエゼキエルにトムはマリアが復活しないことを告げますが、エゼキエルは多少狼狽するものの信じません。
そして、一瞬の隙を突き、こういった事態に備えて古代から設置してあった最後の切り札を発動します。
その切り札によって洞窟は崩壊し、FBIやブラザーフットのメンバーは退散を余儀なくされます。
エゼキエルとともに洞窟最深部にいたトムはマリアの遺体とともに、聖遺物の保管庫に逃げ込むエゼキエルを追います。
保管庫は洞窟が崩壊しても壊れないように設計してあり、縄梯子で地上に出られるようにもなっていました。
その暗闇の中で、トムはエゼキエルに自分を狙うわけを問いただします。
トム「なぜ人の命を救うということがいけないんだ?」
エゼキエル「みなが救世主の力を持った世の中を考えろ。誰も死なず、人口は爆発し、食料も土地も足りなくなり、生命の尊厳は失われる。地上に楽園を作るどころか、長く続く苦しみしか待っていない地獄の到来だ」
そうこうしているうちに、崩落で出口を失った「聖なる炎」の元になるガスが爆発し、トムだけ何とか脱出に成功します。

後日、キリスト遺伝子の特許をとって広く広めようとしているジャスミンに、計画中止を指示します。
#その理由としては、丸々エゼキエルの台詞を使っていました
そして世界の国々から(ジャスミンを含む)数人の信用のおける人物を集め、残っている実験用キリスト遺伝子を彼らに注射します。
彼らには、「目立たないように」その力を使って人々を助けて欲しいと。



では、書評を。

まず、最初のほうで人名が一気に大量に出てくるので、西洋人名に慣れ親しんでいない日本人には少々混乱が出てくると思います。
また、話の途中でもファーストネームで呼ばれたり、ラストネームで呼ばれたりしていて、このあたりも混乱を招きます。
こういう部分は訳者が気を利かせて欲しいところですね。

また、物語の背景が「キリスト教」世界であるため、キリスト教になじみの無い日本人にはこれまた理解しにくい面があります。
私は「知識として」新約聖書を一度読んだことがあるので、すんなり理解できるのですが、まったく予備知識がないとちょっときついと思います。

では、ストーリーについてですが、これは概ね良好だと思います。
マリアの回想などが適度に散りばめられていますし、キリスト遺伝子の探索では運に左右されるようなことも無く、安直に成功もしないところが好感をもてました。
反面、サスペンス的部分である刺客にトムが狙われる部分ではちょっと都合が良すぎるきらいがあります。

哲学的な部分では、最後にトムが取った行動ですが、これはどうですかね。
いくら信用のおける人々だと(トム個人が)判断した人物だって、裏がある可能性は十分ありますし、人間の考え方なんて時間がたてばどんどん変わってきます。
トムの「円卓の騎士」達が謀判を起こす可能性は十分ありうるでしょう。
キリスト遺伝子は使い方しだいで莫大な利益を生みますからね。
それに、彼らが「通常の治療等を隠れ蓑にして力を使う」といっても、不治の患者が続々と救われる(それも先進国のちゃんとした病院で)となれば、その病院はすぐに一躍有名になり、世界各地から患者が押し寄せるでしょう。
これを防止するには「適度に治らない患者を出す」必要があり、そうなると「誰を治して誰を治さないか」判断する必要が出てきます。
まさに神の領域ですね。
結局のところ、世界に混乱を起こさないためには、未開の地で怪しげな心霊治療とかとして行うくらいしか力を発揮するすべが無いと思うのです。
もしくは、キリストのように放浪しながらその場その場で奇跡を行うかですかね。
#でも情報網と交通の発達した現代ではこれは難しい
というわけで、実際にはやはり自ら「神」になるしかその力は発揮できないと思います。
まさに、エゼキエルが懸念していたことですね。
そういう意味で、思想的には主人公達よりもエゼキエル達ブラザーフット側が(ある意味では)正しいように思います。

あとは、お決まりですがストーリー上の矛盾点。

・聖なる炎の原理は?
救世主が誕生すると色が変わるらしいですが、このあたりはまったく科学的な根拠が示されていませんね。
一応本の根底として、「奇跡などもすべて科学的根拠に基づくものである」というのがあるはずなのですが。

・マリア以外のキリスト遺伝子保持者は救世主ではないのか?
ジャスミンが調べたところによると、キリストと同じ遺伝子を持っていた人(既に死亡)が何人か見つかっています。
その一人は病を治す力があったことも記録されているようです。
彼らは救世主ではないのでしょうか?
まあ、聖なる炎が予言する救世主は遺伝子を持っていればOKというようなものではないのかもしれませんが。

・フランスでの自然寛解(しぜんかんかい)の原因は?
自然寛解とは病が自然に治る=免疫力で自己治癒するということです。
当初フランスの病院で、めったに見られない末期がんの自然寛解が2件も報告されたというところから、トムの救世主遺伝子の案が生まれる訳ですが、結局この原因については語られていません。
二人とも同じ血液型で、珍しい血液型のために同じ輸血用血液が使用されたことが原因であるらしいことが言われていますので、当初は「救世主」の血液が輸血されたのではと思いましたが、キリスト遺伝子は自分自身を治す力が無いらしいのでこれは違ってきます。
それにマリアは献血なんてしなさそうですしね。
そうなると、この事象はまったくキリスト遺伝子とは無関係ということになり、ちょっと都合が良すぎるだろうという感じですね。

・イエスキリストの復活は?
ご存知のようにイエスキリストは処刑されたあと復活しています。
これはどのように説明するのでしょうか?
まあ、復活に関しては作り話であったというおちでも良いですが、そういう話が一切語られないので疑問として残ります。
また、当初キリストの遺伝子をスキャンしたときに「あまりにも普通すぎる」=欠陥らしいものがひとつも無いということに驚いています。
これは、何らかの力で遺伝子が修復されるためではないかというような考察をトムがしているのですが、これも結局違ったということになるのでしょうかね?

・他人を治すだけという力がありうるのか?
結局、キリストの遺伝子は「他人を治癒する力」な訳ですが、科学的に考えるとこういうのはありえないに等しいと思われます。
まあ、自分の遺伝子を手本にして、相手の遺伝子欠陥を修復するということなら納得もできますが、マリアはミツバチに刺された友人を救ったり、落下で死亡した友人を生き返らせたりしています。
トムも、銃で撃たれたエゼキエルの腕を治療しています。
これは、科学的には「ありえない」でしょう。
このあたりから急に「科学的」でなくなってきています。

・キリスト遺伝子を注射してすぐに力が発揮できる
娘の心停止でトムはあわてて実験用のキリスト遺伝子(を幹細胞に組み込むキャリアウィルス)を自分に注射して娘を救いますが、いくらなんでも数分(長くても数十分でしょうか)で体中の遺伝子が置き換わるわけはないかと。
細胞1つでも遺伝子が置き換われば力を発揮できるってのもなんか違う気がしますしね。

・マウスの実験結果から十分に効果は想像できる
トムは娘が心停止に陥るまで、キリスト遺伝子の力を理解できませんでした。
しかし、数日前にはすでに実験用マウスでの結果(単体だと治癒せず、複数一緒だと治癒する)を聞いています。
部下の研究者にこのことの意味をなんとしても突き止めてくれと言っていますが、娘が既に危険な状態なら成功率の低い外科手術(それも完治するわけでもない)に賭けるより、まずはマウスと同じ状況を作ってみようと思いそうなもんです。
まだ安全性も何も分かっていないとはいえ、娘は死の淵なのですし、娘のためなら命を賭けるくらいの意気込みは十分にあるトムなのですから、自分と娘に遺伝子を注入して添い寝するくらいは試してみるのが普通でしょう。

・ゴモラをトムに会わせるのはどうか
ゴモラとは2人いるブラザーフットの刺客のうちの一人(のコードネーム)です。(もう一人がマリア=ネメシス)
ブラザーフットはトムを聖なる洞窟に招く折、監視役として(?)ゴモラを使っています。
そのためにトムに面が割れていて、かつゴモラをトム暗殺に使って失敗したために、トムにブラザーフットが自分の命を狙っている黒幕であることを悟らせてしまいます。
これは普通に考えてありえないでしょう。
暗殺者を、暗殺対象(もともとトムの暗殺中止は一時的なもので役目を終えたら暗殺する予定だった)に会わせるなどもってのほかです。
あの時点ではマリアがまだ捕まっていなかったために、トム暗殺はマリアが行うことになるだろうからというのもあるでしょうが、だとしても二人しか居ない暗殺者をこんなことに使うとは思えません。
最悪、他に適任が居なかったとしたら、トム暗殺を遅らせてでも面の割れていない別の人物(マリアの後釜)を使うのが筋でしょうね。

・トムを聖なる洞窟に連れて行くのはおかしい
ブラザーフットは洞窟の場所が外部に漏れないようにかなり注意しているようです。
#砂漠にあるため車で赴くときは轍を消すための装置までつけている
それなのに、部外者であるトムを招くのはおかしいですね。
どこか別の場所で聖遺物を持って会合すれば良いだけですので。
まあ、聖なる炎を見せるためなどの理由もあるでしょうが、これらは必須事項ではありませんしね。
おまけに元FBI(高官?)がトムの仲間に居るのですから、普通はもっと警戒するでしょう。
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